踊るおばちゃん

それは昨日の稽古の帰りだった。
オイラはすっかり汗を吸って重たくなった道衣やらTシャツやらの入った鞄を持ち、稽古で疲れ、フラフラになって帰路についていた。
電車を降り、家までの間にあるコンビニに立ち寄った。そのコンビニは大通りに面している。
オイラは買い物を済ませ、コンビニを出ようとした。

コンビニの出入り口の自動ドアが開き、オイラが外に出た瞬間、何かが起きた。オイラの左方面から何かが来たのだ。稽古の疲れで朦朧としていて反応が鈍かったが、とっさにオイラはファインティング・ポーズを取ったのだ。ファインテング・ポーズを取る為に振り上げた左手の肘に何かが激突した。
何が起きたか解らないままそのまま身構え、戦闘態勢に入ると、目の前に、自転車に乗ったおばちゃんがバランスを崩して今にもひっくり返りそうな体勢を何とかしようと踊っているではないか。
どうやらこのおばちゃん、自転車を走らせていたところ、コンビニから出てきたオイラにぶつかりそうになって、何とかよけようとしたものの、バランスを崩し、おまけにオイラの肘撃ちをくらい今にもひっくり返るところだったのだ・・・・。靴は脱げ落ち、自転車の前のカゴからは鞄が飛び出し、歩道の植え込みにそのまま突っ込んでいったのでした。まあ、可哀相・・・・。

過去にも2度位自転車に引かれた事がある。オイラがポーとして歩いてる時だ。ポーとしてるオイラも悪いのかもしれないが、何にしても、過去も今回もオイラにぶつかった自転車は何故か、オイラは無傷なのに自転車の方が飛んでいってる・・・・何故だろう??

歩道の植え込みに突っ込んでいったおばちゃんは、起きあがりながらオイラを睨み「何よ〜」とのたまってる。オイラもムッとして「何だ〜」と睨み返す。緊迫した雰囲気が漂う。おばちゃんは鞄を拾い、靴を履いて自転車を起こして、不愉快そうに走っていった。

ようやく事態が飲み込めたオイラ。そうか、オイラはコンビニから歩道を出る時に、右左の安全確認をしないで出たから自転車に引かれた?んだ・・・・

でも、待てよ、オイラは何か悪い事したのか?大体、道というのは”歩行者”が最優先されるべきものである。歩行者の為にあるのだ(自動車専用道路を除く)。
歩行者が歩く道を、特別に自転車やら自動車にも使わせてやってるのだ。だから本来、車は歩行者に対して道を空けろとクラクションを鳴らす権利すら存在しないのだ。車は歩行者に対して「スミマセン、道を空けて下さい」とお願いすべきものだ。オイラは自動車教習所でそう習った。今も自分で車を運転する時にはそう思ってる。
飛び出しならまだしも、歩行者にぶつかるような運転をした自転車が悪いのではないか?
オイラは確かに、右左の安全確認をしないで店から歩道に出たが、飛び出した訳ではないし、まして、ライトに照らされているコンビニから出てきたのだ。店内はガラス張りで夜中でも外から丸見えだ。歩道だって幅は狭いとはいえ、内側=車道よりの方を走る事だってできた筈だ。オイラは自己査定で過失割合2:8でおばちゃんが悪い事にした。

おばちゃんも自転車こけて植え込みに突っ込んだうえに、オイラの肘撃ちまで喰らってるんだからちょっと気の毒かな。痛かっただろうね。
でも、夜中に酒飲んで無灯火で自転車すっ飛ばしてるおばちゃんなんだから、この程度の事故で済んで良かったと気がついて欲しいもんだ。